文芸素人講釈

古今東西の文芸作品について、講釈垂れさせていただきます。

かくも美しきひびの話。

講釈垂れさせていただきます。

 

貫入(かんにゅう)、というのをご存じでしょうか。

貫入とは陶器の模様の一つで、釉薬を塗って陶器を焼いた際、その膨張率の差によって釉薬にひびが入った状態のことを言います。

↓こういうやつですね。

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まあ、知らないと「ひびが入ってる!」ということになりますが、これはれっきとした陶芸の装飾の一つなのですね。

 

ひびと言えば、あの有名な千利休はある日茶の席に女性を呼んだところ、それを聞いた奥さんが激怒、嫉妬の末にその席で使った高価な茶碗を割ってしまったそうです。

さて困った利休、しかし利休はその茶碗を手にとってそのつなぎ目に漆を塗り、こう言ったのだとか。

「これこそが侘び寂びである」と。

 

ひび、と言うとなんだかいやなもの、悪いことのように思えますが、そんなひびさえも模様と考えたり、ある種の美にまで高めるところに、茶道の奥深さを感じますね。

私は茶道とかちっとも分かりませんが、まあ辛いことや悲しいことが続いたとしても、「ああ、なんて日々(ひび)だ」と言う代わりに「ああ、なんて貫入だ」と言ったら、少しは気が晴れるんじゃないかと思う今日この頃でございます。

…いや、晴れませんか。そうですか。

 

貫入の素人講釈でございました。